「ジェネラル・ルージュの凱旋」☆☆☆★★ 海堂作品は「チーム・バチスタの栄光」と「ナイチンゲールの沈黙」という、いわゆる「田口・白鳥シリーズ」はいずれも古本で買って読んではいるのだが、こちらの頭が歳で硬直しているのか、それとも何か生理的に合わないのか、正直、あまりおもしろいとは思えなかった。「チーム・バチスタの栄光」は「このミステリがすごい」第1位などと言われて小説も映画もヒットしたようだが、宝島社から出ている本なので、「宝島」の「このミス」の第1位だと言われても、なんだかマッチ・ポンプのような気がして率直には頷けない。自社出版物を「おもしろくないですよー」などと言う出版社などどこにもないからだ。それでもテレビで放送される(「日本映画専門チャンネル」)というとついつい見てしまうのが、まあ、生来のミーハー気質ということなのだろう。前回の映画「チーム・バチスタの栄光」はイマイチだったなあと思いつつ、今度も第2作目の「ジェネラル・ルージュの凱旋」を見てしまった。 ところが、これが意外におもしろい。 実は、海堂作品はミステリとして見る(読む)限りかなり程度の低いものだと思う。これならまだ内田・浅見光彦シリーズや西村・十津川警部シリーズなどのほうが「ミステリとして」よほどきちんとできているのではないか。はっきり言ってしまおう。要するに、海堂作品はミステリとしての骨格ができていないのだ。「バチスタ」は一応ミステリらしき展開をしてはいるのだがいかにも苦しく、犯人の動機はとても納得できるようなものではない。いくら「すごい」と言われても「ミステリ」としてどこが「すごい」のか、私には全くわからない。「ナイチンゲール」に至っては謎解きがほとんどオカルト・超能力物でミステリとしての体裁すらなしていない(以上、あくまで私の独断と偏見による感想です)。 そこで(ということなのかどうかは知らないが)「ジェネラル・ルージュの凱旋」は、もともと原作自体がミステリ的要素が少ないものであったため、思い切って医者である著者本領発揮の医療ドラマを拡大した(のではないかと原作を読んでいる知り合いが言っていた)。これが成功した。手術のシーン、クライマックスの急患が次々と運び込まれて来るシーンなど(ちょっと長すぎるのが難点だが)なかなかの迫力である。医療ドラマとして成功している。 もちろん、細かいことを言いだせば気になったところはある。 会議中は普通携帯は「マナーモード」にしているのがエチケットだとは思うのだが、医者というのは常識のない連中ばかりなのか。館内全面禁煙だという事務長の台詞があるのに、病院長の応接テーブルの上に灰皿が置かれているのも変だ。も一つ、事務長の家族は結果軽症だったようだが、まさかドクターヘリで運ばれて来たんじゃないだろうね(見た人にだけわかるように書いている)。 まあ、そういう部分は多々あるにしても、それをあげつらう映画でもないだろうし、大きな欠点にもなっていないので問題にする気もない。コーヒー豆を挽くのがうまく伏線になっていたし、クライマックスでの堺がもらったと噂されるリベートの使い道の謎解きや、なぜ「ジェネラル・ルージュ」なのかの見せ方もうまいものだと思う。 話が医療ドラマにシフトして謎解き要素が希薄になってしまったため、白鳥=阿部ちゃんの出番が減ってしまったが、まあもともと「個性的な」顔をした人が演じる灰汁の強い役なので、これくらいのほうがバランス的にはちょうどよかったと思う。一方、田口=竹内さんのボケ顔にはますます磨きがかかり、今や日本一のボケ顔女優と言っていい。このボケ顔はほとんど人間国宝か天然記念物だろう(誉めているんですぞ(^^;)。また、白鳥が近くに来ると震えが起こるという映画ならではの設定での演技が絶品。今回の竹内さんには座布団2枚進呈しよう。 堺雅人は今回実質的な主役のようなもだが、救命救急のセンター長としては若すぎるし貫禄にも欠ける。が、この役がおっさん役者だと映画の魅力半減なので問題はない。ただ、もう少し鋭さがあってもいいのかなとも思うが、あの、チュバチュバ、ニタニタしたところが持ち味なのだから、これはこれでいいのかもしれない。ともかく彼が画面に出てくると明るくなるのがいい。 それから、救命救急センター看護師長役の羽田美智子さん。この人はっきり言って美人ではなくそれほど個性的な顔でもないのになんで芸能界に生き残っているんだろうと思っていたのだが、きちんと演技ができる人だったんですねえ。今では絶滅危惧種と言ってもいい「映画女優」ですな。お見事。もひとつきちんと描かれていなかった貫地谷しほりさんも今後女優としてやっていくつもりなら、いい勉強になったと思う。山本太郎君も「うるるん」だけの人じゃなかったんですな。体力はありそうなので救命救急の医師としてはいいのかも(ただし、あまり腕はよくなさそうではあるが(^^;)。懐かしや「転校生」「時をかける少女」尾美としのり。周防監の「それでもボクはやってない」にもチョイ役で出ていたが、普通のおっさん役を普通にできるので貴重な脇役になっていけるのかもしれない。高島弟はヘアスタイルのせいか、なんだかバナナマンの日村に見えてしまい不気味な印象だけが残った。能面のような演技は意図したものなのだろうが、もう少し表情を出してもよかったのでは? 竹内が堺の私的流用を指摘するシーンやラストのヘリのシーンなども笑いを誘いつつなかなかに鮮やか。前作「チーム・バチスタの栄光」の中途半端手で後味の悪いラストとは違い、にこにこして見終われる。「バチスタ」と比べると「ジェネラル」はあまり話題にならなかったような気がするので興行成績は悪かったのではと思うのだが、こちらの方がはるかにおもしろく見られた。堺、羽田の関係にもうまく決着がついて、後味も悪くはない。これくらいの出来にあれば、おっさんでも十分楽しめる。映画館からにこにこして出て来れたと思う。
☆★は、尊敬する映画評論家=故・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。要するに合格というか許せるぎりぎりのラインということです。)
《参考》 「チーム・バチスタの栄光」☆☆☆(映画)☆☆★★★(小説) 「ナイチンゲールの沈黙」(小説)☆☆★ |